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2012年3月31日土曜日

放射線と放射能から自ら守ろう



まずは今回の地震と原発事故に被災された方に心よりお見舞いをもうしあげますとともに、一日も早い復興と皆様のご健康をお祈り申し上げます。



放射線と放射能から自ら守ろう


私がこのブログを起こした理由:自己防護の重要性の強調


このブログを立ち上げた目的は次のとおりです。

ひとつには、現在の原発事故後の汚染されてしまった列島に暮らす我々にとって、自身と家族、子供たち、同僚が、放射能と放射線による悪い影響を受けるのを防ぐことは今まさに重要であることを強調することです。

この自己防護の必要性の強調とともに、その具体的方法への水先案内となる場をご提供することを目指しています。



汚染された地域住民の防護



放射能に既に汚染されてしまった地域からの退避が原発事故による放射線や放射能に浴びる可能性を抑え、その影響を極小にする最も有効な方法ですが、 国際放射線防護委員会(ICRP)が2008年に公開したレポート  No 111(ICRP 111a) でも指摘されているように、そこに残って住むこともあるでしょう。 また既に列島の広い地域が多かれ少なかれ汚染されてしまっていると考えたほうがよさそうです。そのため、状況に応じた十分な放射線暴露防護方策を取る必要があります。それには、住人自身による防護、自己防護(self-protection, self-help protection)が行政当局による防護策とともに、不可欠です。 


ICRP 111 は、この原発事故緊急事態以後の日本において、その影響を極小にし、かつ、生活を送っていくための基本的な考え方を専門家が整理したもので、具体的な方法を考えていくための手がかりとなるものです。


自己防護


行政当局による防護策と自己防護は車の両輪


自己防護、つまり、自助による放射線防護の考え方は、放射能に既に汚染されてしまった地域においては行政当局による放射線防護方策ととも重要です。 これらは車の両輪にたとえることができるでしょう。当局の方策だけでも自助努力だけでも車は動きません。両方の車輪がうまく連携して初めて目的方向に走ることができます。


健康への影響を極力抑えるためには、放射線を出来るだけ浴びないように、放射能を口や鼻から体に取り込まないように行動する必要があります。浴びる程度は、個人の行動によって大きく違ってきます。 また、特に放射線への影響を強く受ける人、例えば、胎児や子供、また、免疫の低下している人は特に注意した行動が必要です。また、周りの人がそうできるよう気を配る必要があります。この自己防護の具体的な内容はそれぞれの人の身体的状況や、土地や建物の状況、気象条件などによって違う面が出てきます。 その個々人の状況に応じた行動をとれば、暴露する量(浴びる量)はある程度抑えることが可能で、それにより悪い影響を受けるのを極小にすることができます。


行政側が汚染が高いので漁を禁止しているような海域で釣りをして、汚染された魚を自分や他人が食してしまうと、当然、そうでない人より体に取り込んでしまう放射能が、多くなり、体の中で放射線をより多く浴び(内部暴露)、体を悪くしてしまうおそれが小さくありません。また、放射能の汚染が高いきのこを食すると同じことが起こる可能性が地上でもあります。無論、すべての魚やきのこが汚染されているわけではありませんしその程度の問題もあります。(したがって食品の汚染量に関する情報を知っておくことは極めて重要になります。これは詳しく別のところで記載したいと考えています。) また、除洗をした公園で遊ぶ(遊ばせる)か、そうでないかによって違うことも言うまでもないでしょう。 このように、暴露を抑えるためには「自己防護」が不可欠です。


この考えは ICRP 111a において推奨されています。 暴露を抑えるのにはそこから退避するのがもっとも確実ですが、それでもなお、そこに残って住むこともあるでしょう。実際チェルノブイル事故後もそうだったと記載しています。そしてその地に住むのであれば、行政による防護方策とともに、自己防護が不可欠であるというわけです。


自己防護の具体的方策については既にいろいろな資料がある



自らが暴露を抑える方策、 自己防護 の方策については多くの方、専門家だけでなく関心の高い方がインターネット上、または、書籍により発表されております。 このブログではそれらへと御案内するページを追加していきたいと考えております。


ICRPが自己防護の重要性を指摘していることが紹介されていない



国際放射線防護委員会(ICRP)が2008年に発行した報告書 No. 111には、原発事故の緊急事態以後の日本の状況にまさにピッタリとあてはまるのではないか思われる状況(existing exposure situation, 現存暴露状況--要するに既に暴露が起こってしまっている状況)への対応の手引き(guidance)を提供しています。 この手引きを参考として現在の状況について考え、対応策を考えることは極めて重要であり、すでに、いくつかの試みがなされているようです。

ただ、いくつかの紹介事例をみると、ICRPが「自己防護」(self-protection, self-help protection)、まさに被災民にとって重要な点、について重視していることを現時点では十分紹介していないように思えます。一方、自己防護方策については多数の方がネット等でご紹介されておりますが。ICRP 111との関係が十分に示されているかというと現時点では私の見る限り疑問があります。おいおいこの点は改善されていくことが期待されます。その改善にこのブログがいくばくなりとも役に立てばと思っています。


当局の防護策と被災民自身による防護策(自己防護策)は車の両輪であり、それはうまく連携していなければ目的の方向へは向いません。したがって、そのことの重要性もまたここで強調しておきます。そのことを下記のICRP 111の抜粋した要約でも言っているのだと思います。


自己防護策の水先案内


そこで、この「自己防護」 の概念を中心に、ICRP 111を私なりにご紹介し、それに、ICRP 111を手引きとして、私の意見を加えて、具体的な方策について提案や、他の方々の書かれた方策等への水先案内をしたいと考えています。


低線量での放射線の影響について



低線量での放射線の影響をどう見るかは防護策立案に大きな影響がありますが、ここでは議論するつもりはありません。
放射線はいかなる量であれ人体に影響を与えるとの見解が優勢であると理解しています。 100 mSv の放射線を浴びるとそのがんによる死亡確率bが 0.5% 上昇するとのデータがあります。 100 mSv未満では発ガンについて有意なデータは得られていないようですが、安全サイド(conservative)で考えて、100 mSv未満でもそれに比例した影響があると考えた、直線あり閾値モデル(LNTモデル)があり、ICRPも採用しています。 (ICRP 報告書 No. 99) 。 


しかし、このモデルは科学的でない、100 mSv未満のある量では低線量ではかえって健康に良いという見解もあり、また、そもそもその低線量では確かなデータがなく分からないのだから100 mSv未満では防護の必要性がないとかの主張等々に基づいて、自己防護を重視されない方もいらっしゃるようです。


一方で、ICRPが採用しているモデルはおもに原爆による瞬間的に多量に放射線に暴露した時の発がん性のデータに基づいており、低線量を長期にわたって浴びる状況では別のメカニズムで別の病気が発症する、また、しているデータがあると主張されている方もいらっしゃいます。また、内部被曝の問題を外部被曝のデータだけから推論するのは危険だとの考えもあると思います。


私にも自分なりの考えはありますが、いずれの主張が正しいと断定できる立場でもありませんし、また、それを主張したところでまさに今ある放射線や放射能への暴露の問題には役に立ちません。


いずれにしろ低線量での危険性の指摘もあることですし、あえて、放射線を治療や検査の目的で意図的に浴びることや食品に殺菌やジャガイモの発芽抑制のために放射すること(人が浴びるわけではありませんが)を例外として、放射能を体に取り込んだり(口や鼻等から)、放射線に浴びる必要もないと思いますので、やはり、実現可能な自己防護策をとることはお勧めすべきことだと思います。 




a ICRP 111


被災民の参加と行政当局によるその支援

ICRP 111にはその要約で次のように書かれています:
"The report also considers practical aspects of the implementation of protection strategies, both by authorities and the affected population. It emphasises the effectiveness of directly involving the affected population and local professionals in the management of the situation, and the responsibility of authorities at both national and local levels to create the conditions and provide the means favouring the involvement and empowerment of the population." 
つまり、
「この報告書で今ひとつ考察したのは、防護方策、それは行政当局と被災民によるものなのだが、その実施の実際面についてである。強調しておきたいのは、被災民と地域の専門家がその状況の管理において直接参加すること、また、国と地方のレベルの責任ある行政当局が人々の参加と権限の拡大を図るような条件を整備し、手段を提供することが効率的であるということだ。」
私のこの試みも、日本人として防護戦略立案への参加、特に自己防護策の立案と実施の寄与を意図したものと位置づけることができると思います。これはICRP 111の主旨に沿ったものであると考えています。日本ではこういった市民の参加を認めてこなかったのが現状ではないでしょうか。 やったとしても形だけでした。たとえば、原発設置者による原発安全に関する住民会議でのヤラセ行為などはまさにその典型です。これは安全のために役に立ったかというと怪しいものです。 事故前に住民を含めて、ICRP111の言う防護戦略を立てておく必要があったのではないでしょうか。 そもそも、それが正しく行われていれば事故もなかったかもしれません。 


b0.5%はがんによる死亡の確率

0.5 %という数字は、国際放射線防護委員会(ICRP)の2007年の勧告中にある、1シーベルトあたりの危険率(5 %)に由来していると思います。つまり1シーベルトで5 %ならば、その10分の1の100ミリシーベルトならば、危険率は0.5%になるというわけです。しかし、この数字は発がんリスク(がんになるリスク)ではなく、がんで死ぬリスクです。ここでは、2人に1人ががんになるというのは発がんの確率ですから、ここに、危険率(がんで死ぬリスク)の0.5 %をプラスしているのは、発がんリスクとがん死亡のリスクを混同していると考えられます。」 (慶応義塾大学医学部放射線科講師 近藤誠 氏 by (社)SMC  ・SMC-Japan.org     )



ICRP 111 の利用について


ICRPは、このレポートを今回の原発事故に対応して、日本人に対しては無償で読めるように提供しています。 英語ですが非常に役に立つものです。 ICRPには日本人の一人として感謝の気持ちを表したいと思います。 ダウンロードは以下のICRPのサイトから実施できます。


ダウンロードページ: http://www.icrp.org/publication.asp?id=ICRP%20Publication%20111


ICRPのこの好意により、抜粋や翻訳についても、日本人が日本人向けであれば自由に実施してよいと考えました。全文を訳すつもりはありませんが、自己防護の多くの部分は抜粋、翻訳、解説を提供できればと考えています。


著作権の専門家でもないので、もし、このことに問題を感じられるようでしたらご教授いただければ助かります。

翻訳はアイソトープ協会から



また、この日本語訳は日本アイソトープ協会により出版されています。


http://www.jrias.or.jp/index.cfm/6,12071,76,174,html




謝辞

Acknoledgement

I as a Japanese would like to appreciate very much ICRP's kindness of offering the ICRP report  No. 111 without charge for our Japaneses.



なお、下記にいただいたコメントは、このブログの設置者である私が不都合と判断した場合、削除させていただく場合もありますのであらかじめご了承ください。



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